会報誌「サングラハ」第197号(2024年9月)について

会報誌「サングラハ」今号の内容についてご案内致します。

2024年9月25日発行、全頁、A5判、700円

目次

目次

 ■ 巻頭言 …… 2
 ■ 近況と所感 ……岡野守也 … 3
 ■『正法眼蔵』「梅華」巻 講義(4) ……岡野守也 … 6
 ■ サンカーラの発見(1) ……羽矢辰夫 … 16
 ■ グローバルな問題を解決するために人々が持つべき内面について
  ――いくつかの提案を四象限コスモロジーで評価する(12) ……増田満 … 18
 ■ 私のサングラハでの学び(7) ……毛利慧 … 22
 ■『サングラハ』に入会して(1) ……杉山喜久一 … 24
 ■ 森のさんぽとコスモロジー ……横山昌太郎 … 28
 ■ サングラハと私(12) ……三谷真介 … 32
 ■ 講座・研究所案内 …… 43

巻頭言

研究所主幹代理 高世 仁

猛暑の後は台風と水害が日本列島を襲い、気候変動の進行をひしひしと感じさせます。
気象庁は、今年の夏(6~8月)の全国の平均気温は平年と比べ、1・76度高く、これまで最高だった昨年と並び、統計のある1898年以降で最も暑かったと発表しました。
わが国のリーダー達はどう対応するのかと新聞を拡げれば、自民党総裁選の下馬評報道ばかり。取りざたされる政治家のなかに、気候変動に見識を持つ人は見当たりません。
一方、私たち国民の関心も高いとはいえません。世界では「気候変動の影響を自分自身が強く受ける」と危機感を持つ人の割合が増えているのに対し、日本は2015年の34%から21年には26%に激減、主要国中最低になっています。なぜでしょうか。

英国の団体が、「過去一カ月に①見知らぬ人を助けたか、②慈善活動に寄付をしたか、③ボランティア活動をしたか」の3項目を世界各国で質問し、その回答を「世界人助け指数」(World Giving Index)として毎年ランキングしています。順位の高い方がより人助けをする国となりますが、23年版(調査は22年秋)では、142カ国中139位と下から4番目でした。比較的暮らしに余裕のある日本が、カンボジア(136位)などより下とは恥ずかしいかぎりです。
もう一つ、残念な調査結果があります。「政府は貧しい人々の面倒を見るべきか」という質問を世界各国で行ったところ、「同意する」、つまり面倒を見るべきだと答えた人の割合が、ほとんどの国で9割前後だったのに対し、日本は59%で調査した47カ国中、最下位でした。
私たち日本人は、個人として人助けをしないだけでなく、政府が困った人を助けることに4割以上が反対するという世界でも稀な冷たい国民になってしまったようです。
「自分だけが幸せになればよい」というエゴイズムで生きるとすれば、世の中を良くしようなどと考えなくなるのは当然です。選挙の投票にも行かなければ、気候変動を何とかしようとも思わないでしょう。「私」が生きている間だけ楽しければよいのですから。
日本は、世界で進む前近代コスモロジー崩壊の最先端にあると思われます。ここからどうやって人類共通の新たなコスモロジーを広めていけるか。フロンティアを切り拓く先導者として選ばれたのが私たちなのかもしれません。
 (注)いずれも調査はPew Research Centerによる

『正法眼蔵』「梅華」巻 講義 4

研究所主幹 岡野守也

不生不滅だからこそ大地があり花が咲く

さらに無分別後得智で見た世界を説明しているのが、次のところです。

原文

しるべし、華地悉無生なり、華無生なり。華無生なるゆゑに地無生なり。華地悉無生のゆゑに、眼晴無生なり。無生といふは無上菩提をいふ。正当恁麼時の見取は、「梅華只一枝」なり。正当恁麼時の道取は、「雪裏梅華只一枝」なり。地華生々なり。

現代語訳

よく知るがよい、花も大地もことごとく無生(=不生不滅、生滅を超えている)である。花が無生であるから、大地も無生である。花も大地もことごとく無生であるから、覚りの核心もまた無生である。無生とは究極の覚りのことである。まさにこのような時に見うるものが「梅の花がただ一枝」ということである。まさにこのような時に言いうるのが「雪の中に梅の花がただ一枝」ということである。〔だからこそ〕大地も花も生じるのである。

「華地」というのは、花と大地のことです。これらも実は全部ことごとく一体なので、生じも滅しもしない、不生不滅である。つまり生滅を超えていると。
現象としては生滅するのだけれども、その現象の元になっているものは生滅しない。つまり空なる世界、一如なる世界は消滅しない、不生不滅なのです。
これを外側から、「いろいろな物理的現象が起こったり消えたりするけれど、その根底は全部宇宙エネルギーだ」と理解すると、いちおうわかりやすいのでした。
花も大地も不生不滅の存在で、その生ぜずのところだけを言う時に、「無生」と表現しています。
生ずるということは、無かったものが生ずることですよね。生ずるから滅するのですが、生じもせず滅しもしないのが空・一如なる世界であり、その空・一如なる世界の現われが花であり大地なので、本質的には生じない、不生不滅なのです。
花は不生不滅である。花が不生不滅であるということは、同時に大地も不生不滅である。そして花も大地もことごとく不生不滅となると、実は覚りということでさえ不生不滅なのだと。
不生不滅ということがこの上ない覚りなので、この不生不滅の世界を覚って、ここで「今まさにこの時」と世界を見た時に、無分別後得智としては、例えば「梅の花一枝・一輪」と目の前に見える。
「道取」とは言葉で表現することです。そうした、まさに覚りの眼から見た「今・ここ」を、言葉であえて表現すると「雪の中に梅の花がただ一枝」となると。
いちおう区別できる形で雪があり、梅の花があり、そしてそれは数えると一本・二本の中の一本・一輪であると言える。つまり、全ては一体の無分別智の世界から、それでもそれぞれのものは区別して認識できる形であり、そこに梅の花が咲いていることを見ると、「雪の中に梅の花がただ一枝、ただ一輪」ということになる。
この不生不滅の世界があるからこそ、実はこの大地も花も、現象としては生ずることができる。「地華生々なり」とは、不生不滅の世界をベースとして、しかし現象としては大地があり花が咲くことが起こるということです。

(以下、本誌にて掲載)

編集後記

 今号では、ご療養中の岡野主幹より、近況と所感をいただきました。詳しくはぜひ本文をご覧ください。私も徒に悲観することなく、これまで学んだことを思い出して、引続き研究所の活動を支えていこうと思いを新たにしました。主幹の『正法眼蔵』講義録では、「梅華」の後半に差し掛かっています。峻厳な道元禅師は、とりわけ仏門の専門家に対し痛烈ですが、覚りの眼から見た一体性と多様性という事実を伝えようと言葉を尽くしているのですから、そこを踏まえない理解を強く否定するのも、確かに当然と感じられます。羽矢先生の新連載「サンカーラの発見」がスタートしました。これまでとは違う、先生ご自身の仏教哲学・心理学の展開、ご期待下さい。主幹代理の高世さんは、ご多忙により当面休載されます。再開を願っております。増田さんの現代各賢者の思想統合の試みは、今回最終回の結論部分です。ほか、毛利さんを始め、新規の両ご寄稿も興味深いものとなっております。(編集担当)

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